福祉医療機構の医療貸付事業の融資の審査は厳しい?

福祉医療機構の医療貸付事業融資ってどんな制度?
気軽でスピーディな資金調達法である「診療報酬ファクタリング」とは反対の資金調達法がこの福祉医療機構の医療貸付です。
独立行政法人福祉医療機構が行う『医療貸付事業』は民間の社会福祉事業施設及び医療施設等の整備に対し長期・固定・低利の融資を実施することにより、福祉や医療サービスを安定的かつ効率的に提供すること目的として作られた融資制度です。
つまり社会福祉施設や医療法人の不足してる地域の誘致の一環として不足地域に診療所を立てる場合に低金利、固定金利で融資を補助する制度です。
金利は2.0%以下と銀行などの金利と比べても安く、長期、しかも固定金利で利用できるというメリットがあります。
さらに平成30年から一部金利の引き下げや追加枠の増加などもあり、病院関係者にとってはうれしい部分も多いものの、対象や用途が決まっていますので医療機関であればだれでも利用できるわけではありません。
また審査から融資までにはかなりの期間を要するなどいくつかのデメリットもあります。
医療貸付事業のメリット
福祉医療機構の医療貸付事業融資の金利は2.0%以下と非常に安い金利で、病院などの建築費用であれば5億円まで、土地取得費の場合は3億円まで融資を受けることが出来ます。
また償還期間が計画概要によって、最長30年と長く固定金利なので金利上昇リスクを回避するとともに、計画的な施設経営を実現することができます。
※申し込みについては受託金融機関から代理貸付を行う必要があります。
【融資の審査に必要な書類について】
受託金融機関から代理貸付を行う場合以下の書類が必要となります。
計画趣意書
資金計画(調達計画も含みます)
計画図面(配置図・平面図)
直近2ヶ年分の決算書・確定申告書一式(附属明細を含む)
医療貸付事業のデメリット
医療貸付事業は金利が安いのがメリットですが、デメリットも多くあり、医療機関によっては適用されない場合があります。
借り入れは銀行などには知られる
懇意にしてる銀行などと取引があるので福祉医療機構からの借り入れを知られたくないというドクターもいらっしゃるかと思いますが、福祉医療機構をはじめ政府系金融機関は、全国銀行個人信用情報センターに加盟しておりますので借り入れ状況は他の銀行にも知られます。
融資には一定の要件を満たす必要がある
医療貸付事業融資は医療関係者であればだれでも受けれるわけではありません。融資の際には以下の要件を満たす必要があります。
病院の場合は
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- [病床不足地域]基準金利同率
- [病床充足地域]基準金利+0.5%
※地域医療構想に基づく計画の場合は充足地域においても不足地域と同じ金利で利用可能(平成30年より)
診療所の場合は機構が定める「診療所不足地域」であることが前提です。
- ・診療所の不足地域
- ・地域の実情により、新設が特に必要と認められる診療所
- ・在宅療養支援(歯科)診療所
- ・かかりつけ医機能を有する診療所
もともとが不足地域の診療所不足を補う目的もあるので、診療所の多いとされる充足地域では一定の要件を満たさないと受けられない問題があります。
用途が決まってる
原則敵に診療所などの建築費用や土地取得費用のみとなります。
事業の運転資金などには使えないのでご注意ください。
融資の期間が非常に長い
機構に直接借入申込みを行なう「直接貸付」と、もよりの金融機関(代理店)を通じて借入申込みを行なう「代理貸付」の制度があり、施設の種類や借入申込額等によって取扱いが異なります。
代理貸し付けの場合は金融機関にもよりますが半年ほど、直接貸し付けでも半年、長ければ1年ほど融資までかかるので、融資まで日数のかかる銀行と比べてもかなり融資までの期間が長いと言えます。
担保と保証人が必要
金利が安いというメリットがありますがやはりこれもネックになるのが担保と保証人です。
原則として、所有者を問わず、次に該当する物件の担保提供が必要となります。
① 融資の対象となる施設及び事業の運営に利用する敷地(原則として、抵当権は第1順位)
② 上記①の敷地上に建築する(存在している)全ての建物
③ 上記①の敷地上に設定する(設定している)地上権
抵当権は一位をつけなければなりません。また保証人をつけない場合は一定の金利(+0.15%)の上乗せをすれば可能となります。
つまり医療貸付事業の融資は金利が非常に安く、長期間固定金利で利用できるのが強みですが、土地建物などのへの使用しか認めず、用途は決まっており、担保や保証人が必要、そして融資までにかなりの時間を要するというデメリットも持ち合わせています。
診療所などが不足する地域などで土地の購入や新規診療所を開設するには向いていますが、それ以外の用途には使えないという部分もあります。
金利が安いメリットはあるものの、煩雑さや融資までの時間、審査の厳しさなど、診療報酬ファクタリングとは対極的な資金調達法と言えます。